「なんであの子はあんなに早く逆上がりができるようになったの?」
「うちの子はなんでできないの?」
このような悩みを抱える親御さんは多いのではないでしょうか。
特に逆上がりは小学校でもやる機会があるので出来ずに落ち込んでいるお子様をみると辛いですよね…。
本記事では
- できない子の割合
- 逆上がりができない子の特徴に関する客観的な情報
- 運動神経や練習環境の影響
- 幼少期からの練習の始め方
- 上達のコツ
- できない原因
を、公開データと公式資料に基づいて整理します!
逆上がりができないのは運動神経が悪いから?いいえ!断じて違います。逆上がりは練習すれば誰でもできるようになる技です。今回は指導してきた生徒全員に逆上がりを習得させてきた僕と一緒に、鉄棒の基本である逆上がりについて学んでいきましょう!
記事のポイント
- 年齢別の習得目安とできる平均年齢
- 順手と逆手どっちが成功しやすいかの要点
- できない原因の整理と安全な練習のコツ
- 公開データに基づくできない子割合と背景
逆上がりの習得が早い子の特徴と習得の目安
- 子供は何歳から逆上がりができるようになる?
- 逆上がりはいつ出来る?タイミングを見極めよう
- 逆上がり習得の平均年齢と発達の関係を解説
- 5歳・4歳・3歳で逆上がりができる子の特徴
- 運動神経が逆上がりの上達に与える影響
- 順手と逆手はどっちが成功しやすい?
子供は何歳から逆上がりができるようになる?
年齢の目安を押さえる前に、逆上がりの成否が年齢だけで決まらない点を整理しておきましょう。
公開情報として、就学前の成功は約2割、小学校低〜中学年で約6割、高学年以降で約2割という傾向が示されています。
これは年齢に伴う身体発達(身長・体重比、上肢筋群の相対筋力、体幹の安定性)や、鉄棒に触れる機会の多さ、練習の段階設定と安全補助の有無が複合的に影響するためです。
そのため年齢=習得可否の決定要因ではなく、練習設計や環境の要因が強く作用すると理解すると、個人差を前提にした支援が行いやすくなります。
教育現場の観点では、小学校体育で器械運動(鉄棒)が段階的に扱われる枠組みが示されているとされ、基礎的な運動感覚(ぶら下がり・足振り・支持)から、上がり技・支持回転技・下り技へと系統的に進める考え方が提示されています。
特に初期段階では、鉄棒の高さ調整(おへそ〜胸の間)、恐怖心を減らす補助(補助板・踏み台・厚手マット)、把持幅(肩幅程度)といった環境設計が、子どもの身体能力に先行して学習を支えます。これらは、練習量よりもまず「正しい条件を整えること」が習得の早道であることを示唆しています。
早いケースでは5歳前後で回転が成立することもありますが、これはぶら下がり保持が安定し、足の振り上げと同時の引き付けができ、かつ恐怖心で体が反らないという3条件が整っている場合にみられます。
逆に、学年が上がって体重が増しても、鉄棒へ体を近づけ続ける技術(おへそを鉄棒へ)が身に付けば到達は十分可能です。
発達差が大きい集団では、感覚づくり→補助付き成功→単独成功の小さな成功体験を積む配列が有効です。
なお、学校体育の位置づけや段階的指導の基本は、文部科学省の解説資料に整理されています。この記事では教育制度や授業設計の一次情報として、次の資料を根拠に用いています(出典:文部科学省 小学校学習指導要領解説 体育編)。
| 期 | 主な割合目安 | ねらい(学習観) |
|---|---|---|
| 就学前 | 約2割 | ぶら下がり・足振りで基礎感覚を獲得 |
| 小1〜小4 | 約6割 | 上がり技の成立と反復、恐怖心の低減 |
| 小5以降 | 約2割 | 技の安定化、発展技への移行と組合せ |
年齢はあくまで目安です。高さ設定・段階練習・安全な補助を行えば、学年に関わらず必ず逆上がりはできるようになります!実際僕が指導している体操クラブでは、入ってきた学年に関わらずみんな逆上がりができるようになっています!
逆上がりはいつ出来る?タイミングを見極めよう
練習を始める「合図」は、年齢よりも準備指標の達成で判断すると安全かつ効率的です。たとえば、
- ぶら下がり保持10秒(前腕・広背筋・握力の基礎)
- 足振りの大振幅(骨盆と肩のタイミング同調)
- おへそを鉄棒へ引き付ける意識(腰を離さない)
- 目線の固定(つま先や斜め前を見る)
を確認し、少しでも不足があれば分解練習で補います。
これらは筋力単独より協調の要素が強く、短時間でも毎日反復することで習得が加速します。週1回の長時間練習より、毎日の短い成功体験が恐怖心の軽減と動作の自動化に効果的です。
さらに、器具条件の最適化はとても重要です。鉄棒の高さはおへそ〜胸の範囲に合わせ、把持幅は肩幅を基準に微調整します。
踏み台や補助板で鉄棒と体の距離を短縮し、「蹴る」と「引き付ける」を時間的に重ねやすくすることが、初成功の近道になります。
グリップは手汗対策や滑り止めの使用可否をあらかじめ確認し、恐怖心の要因となる「滑る不安」を排除します。
安全面では、厚手マットを前後に配置し、補助者は腰または足首を軽く支える位置取りを徹底します。
練習スケジュールは、準備期→感覚づくり→補助付き回転→単独回転→安定化の5段階を目安に、1段階あたり1〜2週間の目安で柔軟に調整します。
準備期では斜め懸垂や体幹の抱え込み保持(20〜30秒×2セット)を取り入れ、感覚づくり期で足振りタッチ(つま先で目標に触れる)を反復、補助付き回転では踏み台と逆手グリップで成功体験を積みます。
単独回転に移ったら、低回数×高頻度(1〜3回を毎日)を基本に、無理な連続反復でフォームが崩れないよう配慮すると、失敗による恐怖心の再発を防げます。
手のひらの皮膚トラブル(まめ・小さな裂傷)がある場合は負荷を下げて、補助者の位置・マット設置・高さ調整を優先しましょう!無理は禁物です。
逆上がり習得の平均年齢と発達の関係を解説

平均的な習得時期は小学校3〜4年に集中するとされますが、その背景には身体発達と運動学習の両側面が関わります。
まず身体発達では、身長の伸びとともに四肢レバレッジが変化し、回転に必要な角運動量と体幹の固定力のバランスが取りやすくなります。
筋力については、相対筋力(自体重に対する筋力)が重要で、体重増加に対して前腕屈筋群や広背筋・大円筋、腹直筋群の発達が追いつく中学年前後に、引き付けの成否が安定してきます。
さらに神経系の成熟が進むことで、蹴る・引く・目線固定の同時実行がスムーズになり、回転の連携が成立しやすくなります。
運動学習の側面では、反復による運動記憶の固定と誤差訂正が進みます。
はじめは「蹴るだけ」「引くだけ」になりがちな動作が、視覚(つま先の位置)、前庭感覚(逆さ感覚)、固有感覚(握りと肘角度)の統合を通じて同調し、腰を鉄棒から離さないという最重要ポイントが自動化されます。
成功体験が小刻みに積み上がるほど、恐怖心による体の反り(伸展反射的な反応)が減り、体を丸める姿勢(屈曲パターン)が優勢になります。これにより、同じ筋力でも回転効率が大きく向上し、連続成功率が上がります。
平均年齢をナビゲーションに使う際は、あくまで集団の傾向であって個人の到達を縛るものではない点に注意しましょう。低学年でも「高さ調整」「逆手での引き付け感覚」「踏み台による距離短縮」といった環境調整が適切なら、成功は十分に現実的です。
一方で、高学年や大人では体格差が大きくなるため、相対筋力と体幹固定のトレーニング(斜め懸垂・抱え込み保持)を併用して技術的ハードルを下げるとよいでしょう。平均という指標を「比較」ではなく「設計」に使う——つまり、いまの段階と次の一歩を可視化することが、無理のない上達計画につながります。
逆上がりができるようになったタイミングなんて本当に気にしないでください。先にできるようになった子と後にできるようになった子、後者の子の方が先に難易度の高い技(空中前回り・蹴上がりなど)を習得することはよくあります!
5歳・4歳・3歳で逆上がりができる子の特徴

未就学から低学年にかけて逆上がりが成立するケースでは、単純な筋力の強さよりも環境条件と学習順序が揃っている点が共通します。
まず環境では、日常的に全身を使って遊べる時間(登る・ぶら下がる・走る・跳ぶ)が比較的確保され、鉄棒以外の遊具や室内遊びでも腕で体重を支える動きが自然に含まれています。
学習順序では、最初にぶら下がり保持(握りと肩の安定)、次に足振りの大振幅(骨盤主導で前後に大きく振る)、続いておへそを鉄棒へ引き付ける意識(腰が離れない)という順で感覚を育てています。
これらが揃うと、3〜5歳でも体重に対する相対筋力が足りていれば、補助付きでの成功が現実味を帯びます。
動作面の特徴として、早期習得例は目線の固定が安定しています。つま先が視界に入る位置へ視線を置くことで体を自然と丸め、骨盤が前に入りやすくなり、回転方向への力が逃げません。
一方で、恐怖心が強いと顎が上がりやすく、胸が開いて体が反るため、引き付けの力が鉄棒に伝わりにくくなります。
未就学児では特に恐怖心の影響が大きいため、踏み台や補助板で鉄棒までの距離を縮め、逆手グリップで引き付けの感覚を先に覚えると、初成功の可能性が高まります。
器具条件も重要です。鉄棒の目安高さはおへそ〜胸で、把持幅は肩幅が基本となります。
高さが高過ぎると腕での引き付けが難しく、低過ぎると足の振り上げが窮屈になり、いずれも回転効率が下がります。グリップは汗で滑らないよう手のコンディションを整え、必要に応じてチョークや滑り止めシートの使用可否を施設規定で確認します。
補助者は腰(骨盤上部)または足首を軽く支え、蹴る瞬間と引き付けの同時化が起こるタイミングで最小限の力を与えます。過度な持ち上げは、子どもが肝心のタイミングを学習する機会を奪うため避けましょう。
練習プランは、成功体験を小刻みに積めるよう低回数×高頻度(1〜3回を毎日)で設計すると、恐怖心の再学習を防ぎやすくなります。未就学〜低学年ほど、疲労が動作の質に直結するため、1セットの中で「良い感覚で終える」ことを優先します。下表は、3〜5歳での練習要素の例です。
| 練習要素 | ねらい | 目安 |
|---|---|---|
| ぶら下がり10秒 | 握りと肩の安定 | 10〜15秒×2 |
| 足振りタッチ | 振幅拡大と骨盤主導 | 5〜10回×2 |
| 逆手引き付け | おへそを鉄棒へ | 3〜5回×2 |
| 踏み台ステップ | 距離短縮と恐怖心低減 | 3〜5回×2 |
要点:高さ調整・逆手・踏み台・短時間高頻度の4点セットが、早期成功を後押しします。
教育現場での段階化や安全配慮は、文部科学省の実技指導資料(鉄棒運動)に整理されていると示されています。一次情報としての参照は次をご確認ください(出典:文部科学省 学校体育実技指導資料 鉄棒運動)。
練習の最後の一回を成功体験で終えるとそれが自信となり、次の練習でのモチベーションが大きく向上します。僕はあと一踏ん張りで成功しそうな時は、補助付きでも成功の感覚を体験させてから練習を終えるようにしています!
運動神経が逆上がりの上達に与える影響
「運動神経」という言葉は日常的に使われますが、技術学習の観点では感覚統合と運動制御のしやすさを指す総称として捉えると実務的です。
逆上がりの上達に直結するのは、
- 視覚情報(つま先や鉄棒の位置)
- 前庭感覚(逆さ姿勢での平衡)
- 固有感覚(握り圧・肘角度・肩の位置)
- タイミング制御(蹴る・引く・目線
を実行する能力です。
これらは先天的要因だけでなく、反復練習による神経適応で十分に高められます。したがって「運動神経がないから無理」という判断は適切ではなく、分解練習と環境調整で習得の可能性は大きく変わります。
具体的な練習方法として、分解→結合→自動化の順で設計します。
分解段階では「ぶら下がり保持」「足振りの大振幅」「おへそを鉄棒へ引き付ける練習」「目線固定」の各要素を個別に練習し、感覚入力を増やして成功確率を上げます。
結合段階では、蹴る瞬間と引き付けの同時化を音声合図や数拍カウント(例:ワン・ツーで蹴る、スリーで引く)で誘導し、時間のずれを減らします。
自動化段階では、成功した感覚を短時間で反復し、過剰練習でフォームが崩れないよう低回数×高頻度を維持します。
動作の協調性を高める練習として、
- 斜め懸垂(足を床に置き体幹を一直線に保ちながら引き付け)
- 抱え込み姿勢保持(膝を胸に引き寄せ骨盤を後傾、腹圧を保つ)
- 足振りタッチ(骨盤主導で振幅を大きくし、つま先で目標を触れる)
- 逆手グリップでの静止引き(肘角度を一定に保ち、おへそを鉄棒へ近づけ続ける)
などがあります。どれも20〜30秒または8〜12回×2セットを目安に、安全とフォームを優先して実施します。
心理面のケアも忘れてはなりません。逆さ姿勢への不安は前庭感覚が未学習なことに起因するため、マットでのゆりかご運動や後転で逆さ感覚を先に学ぶと、鉄棒での恐怖心が軽減します。
成功の記憶を積み上げるためにも、最初の成功は補助付きでよいという方針が有効です。
補助者がタイミングを合わせて最小限の力を与えることで、子どもは「回れる感覚」を早期に獲得し、次の自主練へ前向きに取り組めます。
ポイント再整理:==感覚統合→タイミング→自動化==。運動神経は固定値ではなく、適切なドリルで伸びる学習要素として扱うのが実践的です。
逆上がりの成功に運動神経の良さは必要ありません。大切なのは必要な動作を理解し、諦めずに何度も挑戦することです!
順手と逆手はどっちが成功しやすい?
グリップの向きは力のかかり方と恐怖心に影響します。
初学段階では逆手(手のひらが自分側)が体を鉄棒へ引き付け続ける感覚を得やすく、多くの指導現場で逆上がりの引き付けの導入として用いられます。
上腕二頭筋と前腕屈筋群の力線が体幹に近い方向へ働き、肘が外へ逃げにくいことで、“おへそを鉄棒へ”の状態を維持しやすいのが利点です。一方、順手(手の甲が自分側)は回転後の支持位置への移行がスムーズになり、安定化段階で習得しておく価値があります。したがって、逆手で感覚獲得→順手へ移行という段階化が合理的です。
鉄棒を持つ幅は肩幅が基本です。狭すぎると手首や前腕が巻き込まれ、広すぎると引き付けの合力が分散します。
握る時は親指を回してしっかり鉄棒にかけるサムアラウンドを基本とし、滑り対策を優先します。タイミング面では、逆手・順手のどちらを選ぶ場合も、蹴る瞬間と引き付けの同時実行が成立していなければ回転は止まりがちです。
グリップの選択は目的に応じて使い分け、恐怖心が強い時は逆手+踏み台、支持姿勢の安定化を狙う段階では順手の反復に比重を置くなど、段階ごとに最適解が変わります。
学習段階別のグリップ推奨例
| 段階 | 主目的 | 推奨グリップ | 補助 |
|---|---|---|---|
| 導入(恐怖心強) | 引き付け感覚の獲得 | 逆手 | 踏み台・腰支え |
| 移行(成功体験) | 同時化の精度向上 | 逆手→順手 | 踏み台漸減 |
| 安定(反復練習) | 支持と回転の滑らかさ | 順手 | 最小限の補助 |
安全上の配慮:手掌にまめや裂傷がある場合は練習量を抑え、==滑り・巻き込み・高さ==の三点を再確認。無理な連続反復は避け、良い感覚で終えるのが定着の近道です。
逆手は鉄棒から手が離れやすいという欠点があり、また多くの高難度技は順手で行うことがほとんどなので、最終的には順手で行うことを目標にしましょう!
逆上がりの習得が早い子に学ぶ上達のコツとサポート法
- 逆上がりができない子の特徴は?克服のヒント
- できない原因を理解して練習を工夫しよう
- できない子の割合から見る現代の課題
- 大人にも共通するポイント
- コツを押さえて逆上がりを成功させる練習法
- まとめ:逆上がりをするために大切なこと
逆上がりができない子の特徴は?克服のヒント
逆上がりがなかなかできない子どもには、いくつかの共通した特徴が見られます。主に筋力・タイミング・恐怖心・器具の高さの4要素が複合的に関わります。
特に上肢と体幹の筋力が未発達な場合、引き付け動作が途中で止まり、腰が鉄棒に近づかないまま足が落ちてしまいます。学校体育の指導資料でも、「腰を鉄棒に近づける意識」と「体を丸めるフォーム」が習得を左右するポイントとして挙げられています(出典:文部科学省 学校体育実技指導資料 鉄棒運動)。
また、足の蹴りと腕の引き付けのタイミングがずれると、体が前に進まず回転力が失われます。
このズレを修正するには、「蹴る瞬間におへそを鉄棒へ近づける」という意識づけが効果的です。鏡や動画でフォームを可視化すると、動作のズレが理解しやすくなります。
心理的な壁も大きな要因です。恐怖心があると体が反り、回転軸が後方へずれてしまいます。この場合、低い鉄棒・厚めのマット・補助者の支えを組み合わせて「安全に回れる」経験を積ませることが有効です。
練習初期は恐怖心を軽減することが目的であり、成功よりも体を丸めて動きを再現できたかを評価基準にするとよいでしょう。
また、鉄棒の高さ設定が合っていないケースも多く見られます。高さが高すぎると蹴りの力が届かず、低すぎると回転時に腰が当たりやすくなります。最適な高さは子どものおへそから胸の中間あたりで、これに踏み台を組み合わせると成功確率が大きく上がります。
克服のヒント:恐怖心を減らす安全設計と、おへそを鉄棒へ近づける意識・足先を締める動作・つま先を見る目線の3つを意識すると、回転が安定します。
また、上達が停滞している子には、鉄棒以外の筋力補強も効果的です。
斜め懸垂やぶら下がり保持、腹筋運動、マット上での後転などは、逆上がり動作に直結する基礎体力を養います。これらの練習を並行して取り入れることで、成功への土台を固められます。
逆上がりが苦手な子ほど段階練習が効果的です!簡単な動作から少しずつ覚えていきましょう!
できない原因を理解して練習を工夫しよう
逆上がりができない原因は、1つだけではなく技術・体力・心理・器具環境が複雑に絡み合っています。したがって、原因を1つずつ整理し、段階的に改善することが重要です。
以下の表は代表的な課題と対策の対応関係を整理したものです。
| 原因領域 | 主な課題 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 技術 | 足と腕の動作がバラバラ | 蹴る瞬間に引き付けを合わせる同調練習 |
| 体力 | 上肢筋力・腹筋力不足 | 斜め懸垂・抱え込み姿勢の保持で補強 |
| 心理 | 逆さ感覚への恐怖心 | 後転やマットでの回転練習で慣らす |
| 用具 | 鉄棒が高い・滑る | 高さ調整と滑り止め確認、踏み台併用 |
原因分析のポイントは、「どの動作で止まるか」を観察することです。足が上がらないなら蹴り力の問題、腰が届かないなら引き付け不足、回転直前で止まるなら恐怖心が影響しています。それぞれに異なる解決アプローチが必要です。
また、練習環境の工夫も成果を左右します。たとえば、自宅や公園などの固定された鉄棒よりも、高さ調整ができる可動式鉄棒(幼児用など)を活用することで、子どもの体格に最適な条件を作りやすくなります。
さらに、マットを2枚重ねて安全域を確保すると心理的な安心感が生まれ、動作が自然になります。
練習順序:高さ調整 → 分解練習 → 補助付き回転 → 単独練習の順で難易度を上げると、安全かつ効率的に習得できます。
できない子の割合から見る現代の課題
近年、逆上がりができない子どもの割合は増加傾向にあるとする調査報告があります。民間教育機関の2016年調査では、小学3年生の時点で約7割の児童が逆上がり未習得という結果が示されています(出典:ReseMom 主婦の友社調査)。
一方で、文部科学省の全国体力・運動能力等調査(令和3年度版)では、子どもの日常運動時間の減少が報告されています。
特に都市部では、放課後に屋外で体を動かす機会が減り、週あたりの運動時間が平均2時間未満の児童が約3割を占めるというデータもあります。この背景が、鉄棒などの基礎運動技能の遅れに直結していると考えられています。
また、遊びの内容にも変化が見られます。かつては公園や校庭で自然に身についた動作(登る、ぶら下がる、転がる)が、現代では家庭内やデジタル遊具中心に変化し、体幹や握力を使う時間が減少しています。
これにより、逆上がりに必要な「体を支える」「引き寄せる」筋群の発達が不十分なまま練習に入るケースが多くなっています。
⚠️ 注意:割合は地域や学校環境、運動指導の有無によって大きく異なります。最新の学校・自治体の実態調査を確認し、数値を単独で比較せず、傾向として理解することが大切です。
このような社会的背景から、学校教育現場では段階的な指導カリキュラムの重要性が見直されています。鉄棒運動を安全に行うための段階化・補助方法・器具配置などを、全国的なガイドラインとして整備する動きもあります。
筋肉や骨の発達が不十分なまま過度な練習を行うと、簡単な動作でも怪我をしまうこともあります。僕は実際に鉄棒の前回りで肘が外れてしまった子供を見たことがあります。普段から少しずつ運動する習慣をつけることで、怪我のリスクを大きく減らせます。
大人にも共通するポイント

逆上がりの「できない理由」は、実は大人にも多く共通しています。
大人の場合、児童よりも体重が重くなる一方で、上肢筋力や体幹安定性が相対的に低下しやすいため、体を支える力と引き付ける力のバランスが崩れやすいことが主な原因です。
さらに、仕事や生活習慣による運動不足、肩や肘関節の可動域の減少、恐怖心や体重移動のタイミングのずれなども、失敗の要因として大きく影響します。
特に成人では、「体を鉄棒に近づける」という意識が不足しがちです。これは筋力だけでなく、体を丸める柔軟性(ハムストリングス・腹直筋・肩甲帯の可動性)が不足しているために、体が反り、回転方向へのエネルギーが分散してしまうことが原因です。
結果として、腕力に頼った引き上げ動作になり、体重に見合ったパワーを出し切れずに途中で止まってしまうケースが多く見られます。
そのため、大人が再挑戦する場合には、筋力トレーニングの前に体幹トレーニングと柔軟をしっかりと行うことが有効です。おすすめの準備運動としては以下の通りです。
- 抱え込み腹筋: 膝を胸に引き寄せ、体を丸める感覚を強化
- 斜め懸垂: 広背筋・上腕二頭筋の基礎筋力を安全に強化
- 後転: 逆さ姿勢への抵抗感を低減し、平衡感覚を養う
- 肩のストレッチ: 肩関節の前傾と肘の引き寄せ動作をスムーズに
これらを取り入れることで、体を支えながら「おへそを鉄棒へ近づける」動作が実行しやすくなります。大人の場合は体重に対して必要な相対筋力が高いため、回数よりもフォームの質を重視して練習を行うことが成功の鍵です。
さらに重要なのは安全管理です。大人の筋肉・腱・関節は子どもに比べて回復力が遅いため、ウォームアップとクールダウンを徹底することが不可欠です。
練習中に痛みや違和感が出た場合は、直ちに中止し、医療専門家の指導を受ける必要があります。また、体力や柔軟性に個人差が大きいため、「自分の体の状態を理解し、無理のない段階設定を行う」ことが何より重要です。
メモ:大人が再挑戦する際は、運動習慣の再構築と段階的負荷の設定が鍵です。補助具やトレーニングバンドを活用し、安全に「逆上がりの動作原理」を体感することから始めましょう。
子どもの頃得意だったからといっていきなり挑戦して怪我をしてしまうことは少なくありません。大人の方は特に、運動前の準備体操をしっかりと行いましょう!
コツを押さえて逆上がりを成功させる練習法

逆上がりを成功させるための本質は、筋力よりも動作の同調性にあります。つまり、「蹴る」「引き付ける」「目線を保つ」「体を丸める」これらを同時に行えるようにすることが最大のポイントです。
体を引き上げようと意識しすぎると腕の動作が先行し、蹴りとのタイミングがずれます。理想は、足の蹴りと腕の引き付けが同じリズムで発動し、体が一体化して回転を生み出す形です。
次のような練習を段階的に実施することで、動作を体系的に習得できます。
練習段階のフロー
- 高さ合わせ: 鉄棒の高さをおへそ〜胸の間に設定する
- ぶら下がり保持: 10秒間体を支え、握力と肩安定性を養う
- 足振り拡大: 前後の振りを大きくし、骨盤を動かす感覚を掴む
- 逆手で引き付け感覚: おへそを鉄棒へ近づける動きを強化
- 補助板・踏み台の使用: 距離を縮めて初回成功を狙う
- 順手への移行: 安定したフォームを維持しながら自然な流れで順手へ
- 単独反復: 成功感覚を毎日少しずつ積み重ねて自動化する
以下の段階練習は、文部科学省の器械運動資料でも推奨される段階的練習法を参考にしています(出典:文部科学省 学校体育実技指導資料 鉄棒運動)。
| ドリル名 | 目的 | 推奨回数 |
|---|---|---|
| 斜め懸垂 | 引き付け筋(広背筋・上腕)の強化 | 8〜12回×2セット |
| 抱え込み保持 | 体幹と腹直筋の安定化 | 20〜30秒×2セット |
| 足振りタッチ | 骨盤の可動と蹴りのタイミング習得 | 10回×2セット |
| 補助板ステップ | 恐怖心軽減と初回成功への導入 | 5回×2セット |
練習では「できることを確実に積みあげていく」という構成が非常に重要です。1回の成功体験が次の自信に繋がり、恐怖心を減らします!
まとめ:逆上がりをするために大切なこと
逆上がりの習得は年齢よりも、段階的な練習設計と正しいフォーム意識が鍵です。
上達を早めるための重要ポイントを整理します。
- 鉄棒の高さはおへそ〜胸の間に設定する
- 逆手で引き付け感覚を掴み、順手へ移行する
- 蹴る・引く・目線・体の丸めを同時に行う
- 「おへそを鉄棒へ近づける」意識を持つ
- 恐怖心を減らすために補助板・厚マットを使う
- 低回数・高頻度の練習でフォームを崩さず定着
- 分解→結合→安定の3ステップを意識する
- 早期習得例は環境要因(遊び・反復)が大きい
- 大人の再挑戦では負荷設定と安全確認を徹底する
逆上がりは「才能」や「運動神経」ではなく、正しい方法で練習すれば誰でもできる技です。
子どもも大人も、自分の段階に合った練習を積み重ねることで、確実に成果を得られます。焦らず、安全に、そして小さな成功を積み重ねながら進むことが、逆上がりを楽しむ最大のコツです。
参考資料
・文部科学省 小学校学習指導要領解説 体育編
・文部科学省 学校体育実技指導資料 鉄棒運動
・全国体力・運動能力等調査 令和3年度
・ReseMom:「小学3年生の7割が逆上がり未習得」調査

