こんにちは!スルースのVictory Academy、運営者の「スルース」です。
「跳び箱の授業がある日は、朝からお腹が痛くなる…」「教員採用試験の実技に跳び箱があるけれど、怪我が怖くて練習に身が入らない」そんな悩みを抱えていませんか?
大人になっても、あの硬くて大きな箱に向かって全速力で走るのは、本当に勇気がいることですよね。私たちが跳び箱を前にして足がすくんでしまうのは、決して「根性がない」からではありません。
実は、跳び箱という運動には、人間の本能的な防衛反応を呼び覚ます明確なトリガーが潜んでいるのです。
特に、足を閉じて跳ぶ「閉脚跳び(抱え込み跳び)」や、大きく足を開く「開脚跳び」において、失敗して激突するイメージが頭から離れないという人は多いはずです。
しかし、その「怖い」という感情の正体を正しく理解し、バイオメカニクス(運動力学)に基づいた正しい体の使い方を学べば、恐怖心は驚くほど小さくできます。
この記事では、根性論は一切抜きにして、なぜ跳び箱が怖いのかというメカニズムと、それを技術的に解決するための具体的な練習ステップを徹底的に解説します。
- 跳び箱に対する恐怖心が生まれる「脳と体」の物理的な原因
- 開脚跳びでスネをぶつけたり、閉脚跳びで引っかかったりする本当の理由
- 恐怖心を感じないレベルから始める、確実なスモールステップ練習法
- 突き指や手首の怪我を未然に防ぎ、安心感を持って練習するための安全対策
※本記事は、筆者の経験や調査に基づく一般的な情報・考え方の紹介です。具体的なトラブルや体調不良などについては、所属先の相談窓口や専門家への相談も検討してください。
跳び箱が怖いと感じる根本的な理由

多くの人が「恐怖心=心の弱さ」と捉えがちですが、まずはその認識を捨てましょう。恐怖心は、あなたの脳が「このままでは危険だ!」と判断して送っている、極めて高度で正常なアラート信号です。
問題なのは、そのアラートが強すぎて、逆に体を動かなくさせてしまっていること(すくみ現象)にあります。ここでは、なぜあの箱がこれほどまでに私たちを怖がらせるのか、その正体を深掘りしていきます!
大人の教員採用試験でも恐怖は壁になる

「跳び箱なんて小学生の時にやったきりだ」という大人にとって、教員採用試験や運動指導の現場で再び跳び箱と向き合うことは、想像以上のストレスになります。
体重比による負荷の違い
まず理解しておきたいのが、子供と大人では身体条件が全く異なるという点です。大人は子供に比べて体重が重いため、跳び箱に手をついて体を支える瞬間に、手首や肩にかかる負荷が格段に大きくなります。
「自分の腕で、この体重を支えきれるだろうか?」「腕が折れるんじゃないか?」という、子供時代には感じなかった物理的な不安が、恐怖心の根底にあります。
社会的プレッシャーと失敗への恐れ
さらに、教員採用試験という特殊な環境が心理的なハードルを高めます。
「試験に合格しなければならない」「将来、先生として生徒に見本を見せなければならない」という強いプレッシャーは、体を過度に緊張させます。
「失敗して転んだら恥ずかしい」「怪我をして仕事に支障が出たらどうしよう」という、大人特有のリスク計算が瞬時に行われ、これが筋肉の硬直(共縮)を招きます。
結果として、スムーズな助走や踏み切りができなくなり、パフォーマンスが低下してしまうのです。大人が跳び箱を怖がるのは、身体的にも社会的にも、守るべきものが多いための正常な反応だと言えます!
できないと思い込む心理的な理由

「自分には運動神経がないから跳べないんだ」と諦めていませんか?
実は、跳び箱ができない理由の9割は、身体能力の問題ではなく、脳が作り出す「心理的なブレーキ」にあります。
跳び箱は、マット運動や鉄棒といった他の器械運動とは決定的に異なる、ある特異な構造を持っています。
それは、「静止している硬い障害物に向かって、自ら全速力で衝突しに行く」という点です。冷静に考えれば、これは生物として非常に不自然で、危険を伴う行動です。だからこそ、私たちの脳は強烈な拒絶反応を示します。
脳が錯覚する「巨大な壁」(Looming Effect)
助走位置に立って跳び箱を見たとき、実際のアスペクト比以上に「巨大で、威圧的な壁」のように感じた経験はありませんか?
これは心理学的に「Looming Effect(ルーミング効果/迫り来る効果)」と呼ばれる現象に近い感覚です。特に、目線が低い子供や小柄な女性の場合、数段積まれた跳び箱を見上げる形になります。
この「見上げる」という視覚情報が、対象物を「乗り越えるべき道具」ではなく、「立ちはだかる巨大な構造物」として脳に認識させてしまうのです。
さらに、「木製の硬い質感」や「角ばった形状」が、視覚を通じて脳の扁桃体(へんとうたい)という部位を直接刺激します。
扁桃体は恐怖や不安を司る原始的な脳の部位であり、ここが「衝突の危険あり!」と判断すると、瞬時に闘争・逃走反応(Fight or Flight response)を引き起こします。つまり、あなたの意思とは関係なく、本能レベルで「逃げるか、止まるか」の指令が出されてしまっているのです。
恐怖が生み出す「負のスパイラル」の正体
この脳からの緊急停止命令が、実際の運動パフォーマンスにおいて最悪の「負の連鎖」を引き起こします。パラドックス(逆説)的ですが、「怪我をしたくないから慎重にやる」という防衛本能こそが、実は怪我や失敗の直接的な原因になっているのです。
<恐怖が引き起こす失敗のメカニズム>
- ①防衛的減速(ブレーキ): 脳が衝突の衝撃を和らげようとして、無意識に助走スピードを緩めます。
- ②運動エネルギーの消失: スピードが落ちることで、物理的に体を持ち上げるためのエネルギー(運動エネルギー)が不足します。
- ③予期せぬ失敗: 高さが足りず、跳び箱の上にお尻が乗ってしまったり、スネを激しくぶつけたりします。
- ④恐怖の強化(トラウマ化): 「やっぱり痛かった」「恥ずかしい思いをした」という実体験が記憶され、次の挑戦時の恐怖心を倍増させます。
このメカニズムを理解することが、克服への第一歩です。「怖いからスピードを落とす」のではなく、「スピードを落とすから怖い結果になる」という物理的な真実に気づくこと。恐怖心はあなたの能力不足の証明ではなく、単なる脳のセキュリティシステムの誤作動に過ぎないのです。
開脚跳びで足をぶつける恐怖心の正体

跳び箱の授業で最も基本的かつ最初に習う「開脚跳び」。
一見、ただ足を左右に開いて飛び越えるだけのシンプルな技に見えますが、多くの人にとって、これは「恐怖の関門」となります。
その最大の理由は、「着地の瞬間に、箱の角にスネ(弁慶の泣き所)や膝の内側を強打する」という強烈な失敗イメージがあるからです。あの骨に直接響くような激痛は、一度でも経験すると強烈なトラウマとなり、「またぶつけるかもしれない」という予期不安が体を委縮させてしまいます。
「足が開かない」は大いなる誤解
「ぶつけるのが怖い」と感じている人のほとんどは、「自分は体が硬いから足が開かないんだ」「もっと早く足を開かなければ」と考え、必死にストレッチをしたり、タイミングを早めようとしたりします。
多くの場合あなたが足をぶつける原因は、柔軟性でもタイミングでもありません。バイオメカニクス(身体運動学)的に見た真の原因は、「お尻の位置が低すぎる」ことにあります。
人間の股関節の構造上、脚を横に大きく開く(外転させる)ためには、骨盤がある程度の高さにある必要があります。お尻(骨盤)が肩よりも低い位置にある状態では、大腿骨の動きが制限され、物理的に脚を大きく開くことができません。
つまり、お尻が上がっていない状態で無理やり足を開こうとしても、構造的にロックがかかってしまい、結果として「半開き」の状態で箱の側面に突っ込んでしまうのです。
恐怖心が「ぶつかる姿勢」を作っている皮肉
では、なぜお尻が上がらないのでしょうか?ここに、恐怖心が引き起こす残酷なパラドックス(逆説)が存在します。
「怖い!」と感じた瞬間、人間は本能的に以下のような防衛反応をとります。
- 腰が引ける(後傾姿勢): 衝突を避けようとして、上半身を起こし、腰を後ろに引いてしまいます。
- 腕が縮こまる: 衝撃に備えて肘を曲げてしまいます。
- 視線が下がる: 足元を気にして下を向いてしまいます。
この「腰が引けた姿勢」こそが、お尻を重くし、低い位置に留めてしまう元凶です。重心が後ろに残っているため、いくら強く踏み切っても体は持ち上がりません。
お尻が箱よりも低い位置にあれば、当然ながら足は箱を越えることができず、膝やスネが直撃します。
<恐怖の悪循環>
- ぶつけるのが怖いから、腰が引ける(後傾)。
- 腰が引けるから、お尻が上がらない。
- お尻が上がらないから、股関節がロックされて足が開かない。
- 足が開かないから、箱に激突する。
つまり、「ぶつけるのが怖い」という感情そのものが、皮肉にも「最もぶつかりやすいフォーム」をあなたにとらせているのです。
解決策は「足」ではなく「突き放し」
この恐怖のループを断ち切るために意識すべきは、「足をどうにかしよう」とすることではありません。「手で箱を強く押し、お尻を高く突き上げる」ことだけに集中してください。
手をついた瞬間、跳び箱を「下」に強く押し込む(突き放す)ことで、その反作用として体とお尻が「上」に浮き上がります。
お尻さえ高く上がってしまえば、意識しなくても足は自然と振り子のように下から横へとスムーズに開き、驚くほど軽やかに箱を越えていくことができます。
「足を開く」のではなく、「お尻を上げる」。意識のポイントを変えるだけで、あの恐怖の激突リスクは大きく減らすことができます!
閉脚跳びや抱え込み跳び特有の不安

足を閉じたまま、両腕の間を通す「閉脚跳び(抱え込み跳び)」は、開脚跳びよりも高度な技術と、別の種類の恐怖心を伴います。
空間的なパラドックスへの恐怖
「自分の両腕が手をついているその狭いスペースに、どうやって自分の両足を通すのか?」
初心者にとって、これは物理的に不可能に思える「空間的な矛盾」です。「足が手に引っかかるんじゃないか」「つま先が箱に引っかかって、そのまま前転して頭から落ちるんじゃないか」という具体的なイメージが、恐怖の核心です。
解決の鍵は「猫背」にあり
この恐怖を克服するための技術的な正解は、「背中を丸める(猫背になる)」ことです。解剖学的には「胸椎の後弯」と言いますが、背中を丸めてお尻を高く突き上げ、膝を胸にギュッと引き寄せることで、腕と胴体の間に「トンネル」が生まれます。
しかし、恐怖を感じると人は本能的に体を反らせて顔を上げてしまいます。体が反ると、このトンネルが潰れてしまい、足を通すスペースが消滅します。
その結果、つま先が箱に引っかかり、恐れていた「前転落下」が起きてしまうのです。閉脚跳びでは、「怖くても背中を丸める」という、本能とは逆の動作が求められるため、ここを理性でコントロールする必要があります。
突き指などの怪我を防ぐための知識
「失敗したら痛い思いをする」という予期不安も、パフォーマンスを低下させる大きな要因です。特に跳び箱で頻発する「突き指」は、指の靭帯を損傷する厄介な怪我であり、これが怖くて思い切り手をつけないという人も多いでしょう。
突き指のメカニズムと悪循環
突き指は、着手の瞬間に指が完全に伸びきった状態で強い衝撃を受けたり、体重を支えきれずに指が過度に反り返ったりすることで発生します。ここで重要なのは、「怖いからといって、恐る恐る手をつくと、余計に怪我のリスクが高まる」ということです。
恐怖で筋肉が過度に緊張した状態で、勢いのない中途半端な着手をすると、タイミングが合わずに指先に変な力が加わりやすくなります。
逆に、正しいフォームで「パンッ!」と勢いよく手をつき、手のひら全体で衝撃を吸収する方が、指への負担は分散され、安全性が高まるのです。
大人の場合、体重を支える手首への負担も無視できません。手首が硬い状態で強い衝撃を受けると、捻挫や軟骨の損傷につながる可能性があります。練習前の準備運動では、手首を反らす・曲げるストレッチを念入りに行いましょう。また、着地マットが滑ったりズレたりしていると、着地時の捻挫の原因になります。
跳び箱が怖い人でもできる克服練習法

恐怖心の正体がわかったところで、次はいよいよ実践的な克服法です。ここで大切なのは、「怖いまま無理やり跳ばない」こと。恐怖心を根性でねじ伏せるのではなく、脳が「これなら安全だ」と納得できるレベルまで難易度を下げ、成功体験を積み重ねていく「スモールステップ法」が最もおすすめの方法です!
恐怖心を克服するスモールステップ

いきなり完成形の跳び箱(高い段数)に挑むのは、泳げない人がいきなり海に飛び込むようなものです。まずは跳び箱を使わず、床の上での安全な運動から始めて、必要な感覚を養いましょう。
| レベル | 練習内容 | 目的と効果 |
|---|---|---|
| Level 0 | カエル跳び・手押し車 | まずは器具なしで。自分の体重を腕で支える感覚(支持感覚)と、腕の筋力を養います。「腕が折れるかも」という不安を払拭する基礎工事です。 |
| Level 1 | 馬跳び | 人間は跳び箱よりも柔らかく、高さも調整できます。信頼できるパートナーと行うことで、恐怖心を和らげつつ、「手をついて体を浮かす」タイミングを掴みます。 |
| Level 2 | 床上での0段練習 | 跳び箱の最上段だけを床に置いて跳びます。高さによる恐怖(落下のリスク)を完全になくし、開脚や閉脚のフォーム作りだけに集中します。 |
| Level 3 | 低い段(2〜3段) | ここで初めて実際の跳び箱の形にします。低い段から始め、「跳べた!」という成功体験を脳に上書き保存していきます。 |
このように段階を踏むことで、脳は「この動作は危険ではない」と学習し、扁桃体の興奮(恐怖反応)を鎮めてくれます。もし練習中に「怖い」と感じたら、恥ずかしがらずにすぐに一つ前のステップに戻ってください。それが結果的に一番早い習得につながります!
踏み切り板を強く踏むコツとタイミング

「いざ跳ぼうとすると、足が合わなくて減速してしまう」「片足でまたぐような不格好なジャンプになってしまう」……。
これは、跳び箱に苦手意識を持つ人の多くが直面する壁です。恐怖心があると、どうしても直前で歩幅を調整しようと「ちょこまか走り」になったり、ブレーキをかけてしまったりします。
しかし、跳び箱を跳ぶためのエネルギー源は、100%「助走のスピード」から生まれます。踏み切り板(ロイター板)の手前で減速することは、ガソリンを抜いてから坂道を登ろうとするようなものです。
ここでは、恐怖心があっても失敗しない、正しい踏み切りの技術を解説します。
水平エネルギーを垂直に変える「変換装置」
まず、踏み切り板(ロイター板)の役割を正しく理解しましょう。あれは単なる足場ではありません。助走で生み出した「前に進む力(水平エネルギー)」を、一瞬にして「上に上がる力(垂直エネルギー)」に変換してくれる、高性能な増幅装置(バネ)です。
この装置のスイッチを入れる条件はたった一つ。「強い衝撃を与えること」です。
そっと乗ってもバネは縮みませんが、強く踏み込めば、その分だけ強い力で体を空中に押し上げてくれます。「怖いからそっと踏む」というのは、この装置の機能を自ら殺してしまう行為なのです。
「片足」ではなく「両足」が絶対条件
陸上競技の走り幅跳びなどは「片足踏み切り」ですが、跳び箱を含む器械体操は「両足踏み切り」が絶対のルールです。
恐怖心があると、どうしても歩く動作の延長で片足ずつ板に乗ってしまいがちです。しかし、片足では体重を支えきれず、板の反発も半分以下になってしまいます。
助走のリズムを「タ・タ・タ・タ」と走ってきたら、板の直前で小さくジャンプ(プレジャンプ)し、両足を空中で揃えてから、二本の足で同時に板を叩く必要があります。
「グーでドン!」のリズムと踏む位置
正しい踏み切りを習得するための魔法の合言葉は、「グーでドン!」です。
<成功率を上げる3つのポイント>
- リズムは「タン・タン・タン・ウン・パンッ!」: 「ウン」で小さな予備動作(タメ)を作り、両足を揃えて「パンッ!」と板を叩きます。
- 足の裏ではなく「母指球」で: ベタ足で踏むと力が逃げます。足の指の付け根(母指球)あたりで、板を「蹴る」のではなく、真下に「突き刺す」イメージです。
- 板の「先端」を踏む: 怖いと板の手前を踏みがちですが、ロイター板は構造上、先端(跳び箱に近い側)が最もよく跳ねます。「跳び箱にぶつかりそう」と怖がらず、板の奥まで踏み込むことが、楽に高く跳ぶコツです。
まずは跳び箱を跳ぼうとせず、助走してロイター板だけを両足で踏み、「ドーン!」と大きな音を鳴らして真上にジャンプする練習を繰り返してください。マットに着地した時、「あれ?勝手に体が持ち上げられた」という浮遊感を感じられたら、それが正解です。その感覚さえ掴めれば、高さへの不安は嘘のように消え去ります!
どこを見るかで変わる着手の成功率
跳び箱を跳ぶ瞬間、あなたの視線はどこに向いているでしょうか?
「踏み切りのタイミング」や「助走のスピード」に気を取られがちですが、実は「目線」こそが、体の動きを自動制御するコントロールタワーの役割を果たしています。
特に恐怖心がある人は、無意識のうちに「自分の手元」や「跳び箱の手前側の角」を凝視してしまう傾向があります。
「ぶつかりたくない」「失敗したくない」という自己防衛本能が、最も自分に近い危険箇所(箱の手前)に焦点を合わせさせるのです。しかし、この「手前を見る」という行為が、バイオメカニクス(身体運動学)的には致命的なブレーキとなり、失敗を誘発する最大の原因になってしまいます。
なぜ「手前を見る」と失敗するのか?
人間の体には「頭が向いている方向に重心が移動する」という特性と、「視線が下がると背中が丸まり、腰が落ちる」という連動性があります。
跳び箱の手前(着手する場所の近く)を見てしまうと、脳はそこを「到達点(ゴール)」だと勘違いします。すると、次のようなエラー連鎖が瞬時に発生します。
- ブレーキ作用: ゴールが手前にあるため、体は無意識に減速し、前方向への推進力が失われます。
- 肘の屈曲: 手元を見ると、どうしても腕が縮こまり、肘が曲がってしまいます。肘が曲がると体を支えきれず、顔面から崩れ落ちるリスクが高まります。
- 回転半径の不足: 手前に手をつくと、自分の体と手をついた位置との距離が近くなりすぎます。これでは、お尻を持ち上げて前に回転するためのスペース(回転半径)が確保できず、跳び箱の上にお尻が「ドスン」と乗ってしまいます。
つまり、慎重になって手元を見れば見るほど、物理的には「跳べない姿勢」を完成させてしまっているのです。
視覚的なトリックを使おう:マジックテープ作戦
この「恐怖の視線」を矯正し、成功率を劇的に上げるテクニックが、視点を強制的に遠くへ誘導する「マジックテープ作戦」です。
方法は非常にシンプルです。跳び箱の**「奥の方(着地マットに近い側)」**に、目印となるビニールテープやシールを貼ってください。そして、助走を始める前に「あのシールをタッチしに行く!」と強く自分に言い聞かせます。
<「奥を見る」だけで変わる体の反応>
視線を跳び箱の奥(遠く)に向けるだけで、体には以下のような劇的な変化が起こります。
- 腕が伸びる: 遠くにある目印に触れようとするため、自然と腕が前方にピンと伸び、肘がロックされます。これにより、強い支持力が生まれます。
- 前傾姿勢の獲得: 遠くを見ることで顎(あご)が上がり、頭部が前方へリードされます。これにより、重心がスムーズに前へ移動し、お尻が高く上がりやすくなります。
- クリアランスの確保: 手を遠くにつくことで、腕と胴体の間に広い空間が生まれます。この空間こそが、脚が引っかからずに通り抜けるための「トンネル」となるのです。
「怖いから手前を見る」のではなく、「怖いからこそ、遠くを見て安全なスペースを確保する」。この逆転の発想を持つことができれば、あなたの跳躍フォームは一瞬で見違えるほど改善されます。まずは低い段で、この「遠くへのタッチ」をゲーム感覚で練習してみてください!
指のテーピングで安心感を得る方法

技術的な練習をしていても、どうしても「突き指が怖い」という不安が拭えない場合は、物理的な防御策を講じましょう。
あらかじめテーピングをしておくことは、怪我の予防になるだけでなく、精神的な「お守り」として非常に強力な効果を発揮します。
心強い防御策「バディテープ」
おすすめは「バディテープ(Buddy Taping)」という手法です。これは、隣り合う指同士をテープでまとめて巻く方法です。
- 人差し指と中指をまとめて巻く
- 小指と薬指をまとめて巻く
こうすることで、強い指が弱い指の「添え木」の役割を果たし、指が外側に反ったり、横に持っていかれたりするのを防ぎます。
また、指の関節部分にテープをクロスさせて貼る「Xサポート」も、靭帯保護に有効です。
「指がガッチリ守られている」という感覚があると、人は不思議なもので、思い切って手をつけるようになります。たかがテープですが、その心理的効果は絶大です!
※なお、
・強い痛みが続く
・指や手首の変形がある
・腫れが強い/動かせない
といった場合は、自己判断でテーピングだけで済ませず、整形外科などで必ず診察を受けてください。
補助があれば恐怖心は劇的に減る
もし、あなたの周りに練習に付き合ってくれるパートナーや指導者がいるなら、迷わず「補助(スポッティング)」をお願いしてください。
恐怖心と戦いながら一人で何度も失敗を繰り返すよりも、信頼できる誰かに物理的に支えてもらう方が、何倍も速く上達します。
ここでは、なぜ補助がそれほど効果的なのか、そして具体的に「どう支えてもらうのが正解なのか」を解説します。
「絶対に止めてくれる」という確信がブレーキを外す
学習者が助走で減速したり、踏み切りで躊躇したりしてしまう最大の理由は、「失敗した時の痛みやリスク」を全て自分一人で負わなければならないからです。
「もしつまづいたら、顔面からマットに落ちる」「変な落ち方をして首を痛めるかもしれない」という最悪のシミュレーションが、脳にブレーキをかけさせます。
しかし、補助者がつくことで状況は一変します。「もし失敗しても、先生(パートナー)が絶対に途中で止めてくれる」「体を受け止めてくれる」という物理的な安全保証(Safety Assurance)が得られると、脳は「リスクなし」と判断し、全力で助走できるようになります。この「思い切った助走」こそが、成功に必要な運動エネルギーを生み出すのです。
正しい補助の入り方(スポッティング技術)
ただし、補助はただ漫然と横に立っているだけでは意味がありません。いざという時に確実に体を支えられる、正しいポジショニングと手の使い方が求められます。
- 立ち位置: 跳び箱の着地側(マット側)の真横、やや跳び箱寄りに立ちます。足は肩幅に開き、いつでも動ける姿勢を取ります。
- 上腕(二の腕)を支える: これが最も基本的かつ重要な技法です。跳んでくる人の「上腕部(肩と肘の間)」を両手で下からしっかりと支え持ちます。これにより、もし跳ぶ人の腕が体重に負けて折れそうになっても、補助者が支えることで頭からの落下(顔面強打)のリスクをかなり低く抑えられます。
- 腰・背中へのガイド: 勢いが足りずに箱の上に止まってしまいそうな時は、もう片方の手で腰や背中を軽く押し、前方への回転をサポートします。これにより、放物線を描くように安全にマットへ着地させることができます。
物理的なサポートと同じくらい重要なのが、「絶対に受け止めるから、思い切り突っ込んでこい!」というような言葉による保証です。この一言があるだけで、跳ぶ人の心拍数は下がり、筋肉の硬直が解け、驚くほどスムーズな動きができるようになります!
教員採用試験では「補助する力」も試される
特に大人の練習、とりわけ教員採用試験の対策において、補助の練習は極めて重要です。
なぜなら、現場の採用担当者は、あなたが綺麗に跳べるかどうか以上に、「子供たちを怪我させずに指導できるか(安全管理能力)」を厳しくチェックしているからです。
仲間同士で交互に補助をし合う練習は、自分の恐怖心を克服するだけでなく、「どこでつまずきやすいか」「どの瞬間に危険が生じるか」を客観的に学ぶ絶好の機会になります。
「自分が跳ぶ練習」と同じくらい、「人を支える練習」に時間を割いてください。それが結果として、あなた自身の技術への理解を深め、恐怖心の根本的な解消へと繋がっていきます。
まとめ|跳び箱が怖い気持ちは技術で解消できる
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ここまで見てきたように、「跳び箱が怖い」という感情は、性格の問題ではなく、物理的な課題と防衛本能のミスマッチから生じるものです。
そしてそれは、バイオメカニクスに則った正しい技術と、段階的な練習によって多くの場合で解消が期待できます。
恐怖心はあなたの能力が低いから生じるのではなく、単に「安全に跳ぶための体の使い方」を、脳と体がまだ理解していないだけなのです。
最初は床でのカエル跳びからで構いません。格好悪くてもいいので、0段から始めてみましょう。遠くに手をつく意識、強く踏み切る感覚、そして指を守る準備。これらを一つずつ積み重ねていけば、あの巨大な壁に見えた跳び箱も、やがて重力から解放される浮遊感を味わえる、楽しい運動遊具へと変わっていきます。
焦る必要はありません。自分のペースで、恐怖心を確かな技術に変えていきましょう。あなたがその壁を軽やかに飛び越えられる日を、心から応援しています!
参考リンク:
日本スポーツ振興センター:小学校教職員向け「骨折事故防止カード(とびばこ)」
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/kenko/pdf/card/R3/R3_11/card_R3_11_2.pdf
文部科学省:小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック「器械運動 鉄棒運動〜跳び箱運動」
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/jyujitsu/1308041.htm
文部科学省:跳び箱を使った運動遊び
https://www.mext.go.jp/sports/content/20230602-spt_sseisaku02-000022053_13.pdf
MSDマニュアル プロフェッショナル版:手指のバディテーピング
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E4%B8%8A%E8%82%A2%E3%81%AE%E5%89%AF%E5%AD%90%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%81%AF%E5%9B%BA%E5%AE%9A/%E6%89%8B%E6%8C%87%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0
日本整形外科学会:「突き指」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/jammed_finger.html
佐久平整形外科クリニック:突き指の対処法とテーピング
https://ar-ex.jp/sakudaira/334972258335/
日本スポーツ振興センター:体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策(調査研究報告書)
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/anzen_school/R2kossetsu/pdf_all.pdf
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