鉄棒の握り方完全ガイド!鉄棒が上達する順手と逆手の使い分け
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こんにちは!「スルースのVictory Academy」のスルースです!
「子供が逆上がりの練習をしているけれど、なかなかできるようにならない…」「鉄棒を握るとすぐに手が痛くなってしまって、練習が続かない…」そんな悩みをお持ちではありませんか?
実は、鉄棒運動において「握り方(グリップ)」は、単に棒を持つということ以上に、身体のパフォーマンスを決定づける極めて重要な要素なんです。
僕自身、これまで1500人以上の方に体操を指導してきましたが、できない原因の多くが「目的に合っていない握り方」をしていることにありました。例えば、逆上がりには逆上がりの、懸垂には懸垂の、それぞれに適した「力の入りやすい握り方」が存在します。
ここを間違えてしまうと、どれだけ筋力があっても技は成功しませんし、最悪の場合、落下や手のひらの皮がむけるといったトラブルに繋がってしまいます。
この記事では、鉄棒の握り方に関する基礎知識から、逆上がりを成功させるための裏技的なグリップ、さらには手の痛みを解消する具体的なケア方法まで、僕の指導経験に基づいたノウハウを余すことなくお伝えします。
正しい知識を身につけて、安全に、そして効率的に鉄棒をマスターしましょう!
- 逆上がりや前回りなど、技の特性に合わせた「順手」と「逆手」の正しい使い分け
- 握力が弱い子供でも回る感覚がつかめる!タオルを使った補助テクニック
- 憧れのマッスルアップに必須!手首の負担をコントロールする「フォールスグリップ」の極意
- 「手が痛い」で練習を嫌いにさせないための、おすすめグローブ選びとマメ対策
逆上がりが上達する鉄棒の握り方

鉄棒運動において、グリップは身体と鉄棒をつなぐ唯一の接点であり、エンジンの動力をタイヤに伝える「トランスミッション」のような役割を果たしています。ここが適切に機能していないと、せっかくの筋力も無駄になってしまいます。
まずは、それぞれの握り方が持つ特性と、それを活かせる場面について深く理解していきましょう!
順手と逆手の違いと使い分け

鉄棒の基本となる握り方には、手の甲を自分に向ける「順手(じゅんて)」と、手のひらを自分に向ける「逆手(さかて)」の2種類があります。
これらは単に手の向きが違うだけだと思われがちですが、バイオメカニクス(生体力学)の視点で見ると、動員される筋肉や関節の可動域に決定的な違いがあります。
この違いを理解することが、効率的な身体操作への第一歩です。
ダイナミックな動きを支える「順手(オーバーハンド)」
順手は、解剖学的に広背筋や大円筋といった「背中の大きな筋肉」と連動しやすい握り方です。懸垂(プルアップ)を順手で行うと、腕よりも背中の外側が疲れる感覚があるのはこのためです。
順手の最大のメリットは、以下の2点に集約されます。
- 手首の自由度が高い(回転技への適性):鉄棒の上で身体を前方に回転させる「前回り」や「空中逆上がり」などの技では、回転に合わせて手首を返す(巻き込む)動作が必須となります。順手は手首の可動域を妨げないため、こうした回転技をスムーズに行うことができます。
- 遠心力への耐性(スイングの安全性):身体を大きく振るスイング動作において、順手は指がフックのようにバーに引っかかる構造になります。これにより、遠心力がかかっても手が外れにくく、高い鉄棒での振りの練習などは、安全管理上、順手で行うのが基本原則です。
強力な引きつけを生む「逆手(アンダーハンド)」
一方、逆手は、前腕を外側にひねることで上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の腱が伸び、収縮力を発揮しやすい状態を作る握り方です。
肘を曲げて重いものを持ち上げるとき、無意識に手のひらを上に向けますよね?あれと同じ原理で、逆手は「身体を鉄棒に強力に引き寄せる」ことに特化しています。
そのため、まだ背中の筋肉が発達していない子供や初心者が、自分の体重を支えたり持ち上げたりする際には、逆手がおすすめとなります。
逆手の意外な弱点:「拡張性」の低さ
引きつけには強い逆手ですが、鉄棒の上に身体が乗った状態(支持局面)では、解剖学的に肘が窮屈になりやすく、「逆手ツバメ」のような姿勢から次の技へ展開するのが難しいというデメリットがあります。あくまで「上がるためのブースター」として捉えるのが賢明です。
【実践編】状況別・グリップ選択マトリクス
「じゃあ、結局どっちがいいの?」という疑問に対して、目的別の使い分けルールを整理しました。指導や練習の際の判断基準にしてください。
| 動作・目的 | 推奨 | 理由とメカニズム |
|---|---|---|
| 身体を引きつける (逆上がり初期、懸垂) | 逆手 | 上腕二頭筋をフル活用できるため、筋力不足を補いやすい。脇が締まりやすく、肘が開くエラー動作も防げる。 |
| 身体を振る・回る (前回り、スイング) | 順手 | 遠心力に対して手が外れにくい。手首を自由に返せるため、回転中に手首を痛めるリスクが低い。 |
| 静止して支える (ツバメ、布団干し) | 順手 | 肩関節が安定しやすく、胸を張りやすい。逆手で支えると肘に過度な負担(外反ストレス)がかかる場合がある。 |
このように、どちらが優れているかではなく「今の目的は何か?」に合わせてグリップを切り替えることが、上達のスピードを大きく変えるポイントです!
逆上がりのコツとなる逆手の活用

多くの小学生(そして、子供にかっこいいところを見せたい大人も!)が最初にぶつかる大きな壁、それが「逆上がり」です。
実は、この技を成功させられるかどうかは、筋力や運動神経以前に、「最初のグリップ選び」で決まると言っても過言ではありません。
結論から申し上げます。
まだ逆上がりができていない段階であれば、迷わず「逆手(さかて)」から始めてください。これには、人体の構造に基づいた明確な理由があります。
大体の失敗は「肘が伸びること」で起きる
なぜ、多くの子が逆上がりに失敗するのでしょうか?僕の指導経験上、失敗する子のフォームには共通点があります。
それは、地面を蹴り上げた瞬間に肘が伸びきってしまい、「お腹と鉄棒が離れてしまう」ことです。
逆上がりは物理学で言うところの「回転運動」です。回転の中心軸(鉄棒)と、回る物体(身体の重心=おへそ周り)が近ければ近いほど、小さな力でクルッと回ることができます。
逆に、肘が伸びて身体が鉄棒から遠ざかってしまうと、必要なエネルギーが何倍にも膨れ上がり、どんなに強くキックしても、身体は無情にも鉄棒の下にぶら下がって終わってしまうのです。
逆手は「自動ロック機能」付きのグリップ
ここで「逆手」の特性が大きな効果を発揮します。順手(手の甲が自分向き)で肘を曲げようとすると、意識して力を入れ続けない限り、体重がかかった瞬間に伸びてしまいがちです。
しかし、逆手(手のひらが自分向き)にすると、以下のバイオメカニクス的な連動が自然に誘導されやすくなります。
- 上腕二頭筋の自然な動員:力こぶの筋肉が構造上収縮しやすくなり、肘が曲がった状態を維持しやすくなります。
- 脇の締め付け効果:逆手でバーを握ると、解剖学的に脇が締まります。脇が締まると肩関節が安定し、腕全体が一本の棒のように強固になり、身体が外に逃げるのを防いでくれます。
ここがポイント!
逆手にするだけで、鉄棒とお腹を磁石のようにくっつけるための「引きつけ」が、順手よりも格段に行いやすくなります。つまり、グリップの特性が技術のサポートをしてくれるのです。
「爪を見る」だけで成功率アップ
子供に指導する際、「逆手にして!」と言ってもピンとこない場合があります。そんな時は、この言葉をかけてあげてください。
「自分の爪を見ながら回ってみよう!」
逆手で握ると、自分の爪が顔の方を向きますよね。回転している最中、ずっと自分の爪を見続けるように意識すると、自然と顎(あご)が引けます。
顎が引けると背中が丸まり、回転半径がさらに小さくなって、驚くほどスムーズに回れるようになります。「逆手+爪を見る」、このコンボは非常に強力です。
「逆手はズルじゃない」成功体験の重要性
保護者の方からよく、「逆手だと変な癖がつきませんか?」「順手でやらせた方がいいのでは?」と質問されることがあります。しかし、僕は声を大にして言いたいです。
「まずは逆手で『できた!』という喜びを味わせてください」
鉄棒運動で最も大切なのは、「回転感覚」を脳にインストールすることです。
「景色がグルンと回る感覚」や「鉄棒の上に乗る達成感」を知らないまま、難しい順手で苦戦し続けると、子供は鉄棒自体を嫌いになってしまいます。
逆手は自転車で言うところの「補助輪」のような戦略的ステップです。まずは逆手で筋力と感覚を養い、自信がついたら順手に挑戦する。この段階的なステップアップこそが、挫折せずに上達する王道ルートなのです!
懸垂力を高める片逆手の効果

「片逆手(かたさかて)」という握り方をご存知でしょうか?
専門用語では「オルタネイト・グリップ(Alternate Grip)」や「ミックス・グリップ」と呼ばれ、右手は順手、左手は逆手(あるいはその逆)というように、左右で異なる握り方をするテクニックです。
一見すると「ふざけているのかな?」「適当に握っているだけでは?」と思われがちですが、実はこれ、物理学的にも理にかなった「強力なストッパー機能」を持った握り方なのです。
「雑巾絞り」の物理学でロックする
なぜ、片逆手にすると驚くほど鉄棒から手が離れなくなるのでしょうか。その秘密は、バーに対してかかる「回転トルク(ねじれの力)」の相殺にあります。
- 順手の手:バーを手前(自分の方)へ回そうとする力が働きます。
- 逆手の手:バーを向こう側(前方)へ回そうとする力が働きます。
この左右逆方向の力が同時に働くことで、まるで雑巾をギュッと絞ったときのような強力な摩擦力が生まれます。
これにより、バーの回転がロックされ、握力が限界に近づいて指が開いてきても、摩擦の力だけでぶら下がり続けることが可能になるのです。
大人の筋トレでも常識!
デッドリフトという、何百キロものバーベルを持ち上げるウェイトトレーニング種目でも、この「片逆手(オルタネイトグリップ)」が使われます。素手で高重量を扱うための、人類の知恵とも言えるグリップ技術なのです。
逆上がり成功への近道!「ダンゴムシのポーズ」
この片逆手が最も輝くのが、逆上がりができない子供(あるいは大人)への基礎筋力トレーニングです。
逆上がりができない最大の要因は、実は「回る技術」以前に、「自分の体重を鉄棒の高さでキープする筋力(維持力)がない」ことにあります。
そこで推奨したいのが、通称「ダンゴムシのポーズ(肘曲げ静止)」の特訓です。
| ステップ | やり方 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. セット | 片逆手で鉄棒を握ります。足元には台を置き、最初から顎(あご)が鉄棒の上に出る位置に立ちます。 | 順手だと滑り落ちる子も、片逆手ならガッチリ止まれます。 |
| 2. キープ | 足を台から離し、「おでこを鉄棒にくっつけたまま」10秒間耐えます。 | 脇を締め、全身を丸めてダンゴムシになりきります。 |
| 3. 交代 | 【重要】左右の手を入れ替えて(右逆手・左順手など)、もう一度10秒行います。 | 身体のバランスを保つため、必ず左右セットで行ってください。 |
この練習を順手でやろうとすると、筋力よりも先に「手が滑る恐怖」が来てしまい、筋肉を追い込むことができません。しかし、片逆手でグリップを固定してしまえば、純粋に「背中と腕の力」だけで耐える練習が可能になります。
「片逆手で10秒キープ」ができるようになれば、逆上がりに必要な「引きつけ力」は十分に備わっています。あとはキックのタイミングさえ合えば、嘘のようにクルッと回れるはずです。
慣れてきたら順手の「ダンゴムシのポーズ」にも挑戦してみましょう。

ここで覚えておいてほしいのが、片逆手はあくまで「ぶら下がる」「引きつける」トレーニング用だということです。
左右の肩の位置が変わってしまうため、前回りや空中逆上がりなどの「回転技」で使うと、身体がねじれて落下したり、手首を痛めたりする原因になります。回る時は必ず「順手(または両逆手)」に戻しましょう!
子供の指導に有効なタオルの活用
「どうしても手が離れてしまう」「後ろに回るのが怖い」…そんな恐怖心や筋力不足を抱える子供たちへおすすめなのが、「タオル補助法(タオルメソッド)」です。
これは特別な道具を買わなくても、家にあるフェイスタオル一本で効果を生む指導テクニックです。
タオルが補助輪の役割を果たす
この方法の目的は、強制的に「鉄棒とお腹を密着させる」ことです。逆上がりの物理的な成功条件は「重心(腰)を回転軸(鉄棒)に近づけること」。タオルを使って腰と鉄棒を結びつけることで、物理的に回りやすい状態を作り出します。
【⚠️重要:安全に関する警告】
タオルを使用する際は、必ず大人が横につき、いつでも補助できる状態で行ってください。タオルが鉄棒に絡まって外れなくなったり、無理な力がかかって落下したりするリスクがあります。絶対に子供一人では行わせないでください。また、タオルを首にかけることは窒息の危険があるため厳禁です。
| 準備するもの | 普通のフェイスタオル(長すぎず短すぎないものがベスト) |
|---|---|
| セッティング | タオルを子供の腰(背中側)に回します。 タオルの両端を、子供の脇の下から前に通します。 その両端を鉄棒の上から被せ、鉄棒と一緒に子供の手で握らせます。 |
| ポイント | タオルがピンと張った状態でスタートすること。緩んでいると効果が半減します。大人が横について、タオルの端を一緒に握ってサポートしてあげるとより安心です。 |
この状態で地面を蹴ると、身体がバーから離れることなくクルッと回れます。子供は「あ、回るってこういう景色なんだ!」「こんなに鉄棒にくっつけばいいんだ!」という感覚を理屈抜きで理解します。
この「感覚のインストール」こそが、指導における大きなブレイクスルーになります!
上級者向けのフォールスグリップ

さて、ここからは「逆上がり」の枠を超え、ストリートワークアウトやクロスフィットで憧れの的となっている高難度スキル、「マッスルアップ(懸垂から身体を鉄棒の上に押し上げる技)」を目指す方へ向けた、少しマニアックなお話です。
マッスルアップに挑戦したことがある方なら分かると思いますが、普通の懸垂のようにバーを握って引き上げても、どれだけ高く飛んでも、バーの上に身体を乗せる(ディップスの体勢に移る)ことができません。
その最大の障壁となるのが、引き上げから押し上げへの切り替えポイント、いわゆる「トランジション」での手首の返しです。
この物理的な壁を突破するために必須となる技術、それが「フォールスグリップ(False Grip)」です。
「未来を先取り」するグリップ技術

通常の順手(ノーマルグリップ)でぶら下がると、手首は当然バーの「下」に位置します。
しかし、マッスルアップのフィニッシュ(バーの上で身体を支えている状態)では、手首はバーの「上」になければなりません。
通常のグリップでマッスルアップを行おうとすると、最も負荷がかかる引き上げの頂点で、瞬時に手首を「下から上へ」強引に返さなければならず、これが至難の業なのです。
そこでフォールスグリップの出番です。この握り方の極意は、「スタート時点ですでに手首を返しておく」ことにあります。
- 手首を深く屈曲させ、手首の関節部分(尺骨茎状突起や豆状骨のあたり)をバーの真上に乗せます。
- その状態をキープしたまま、指と掌でバーを包み込みます。
- 感覚としては、手で握るというより「手首のフックでぶら下がる」状態に近いです。
こうすることで、最初から手首がバーの上にある状態(フィニッシュと同じ手首の角度)を作れます。
結果として、引き上げた勢いのまま、手首を返す動作を省略してスムーズにプッシュ動作へ移行できるのです。
鉄棒でのフォールスグリップは「激痛」との戦い
フォールスグリップは、元々は体操競技の「つり輪(リング)」で使われる基本技術です。
リングは可動式なので手首の角度に合わせて動いてくれますが、鉄棒(固定されたバー)はそうはいきません。
鉄棒でこのグリップを行うと、手首の一点に体重が食い込むことになります。慣れるまでは、手首に強い圧迫感や痛みを感じることが多く、ここで挫折する人も少なくありません。
⚠️注意:無理は禁物です
手首の柔軟性がない状態で無理に行うと、関節や靭帯(TFCCなど)を痛めるリスクがあります。痛みを感じたら直ちに中断し、長期間の休養を取ってください。決して無理をして行うものではありません。
フォールスグリップ習得の3ステップ
いきなりぶら下がると怪我をするので、以下のステップで慎重に身体を慣らしていってください。
| 段階 | トレーニング内容 |
|---|---|
| STEP 1 ポジション確認 | 低い鉄棒を使い、足をついた状態でフォールスグリップを作ります。手首を直角に曲げ、小指側の手首の骨をバーに乗せて体重を預けてみます。「ここに乗せるのか」というポイントを探しましょう。 |
| STEP 2 斜め懸垂 | 足をついたまま、斜め懸垂(ロウイング)を行います。引いた時にフォールスグリップが外れないように、常に手首を巻き込み続ける力を養います。前腕の内側がパンパンになるはずです。 |
| STEP 3 ベントアームハング | ジャンプして顎をバーの上に持っていき、肘を曲げた状態でフォールスグリップでぶら下がります(ベントアームハング)。そこからゆっくりと肘を伸ばしていき、グリップが解けないギリギリのところで耐える練習を繰り返します。 |
フォールスグリップは、習得すれば驚くほど簡単に身体が持ち上がるようになりますが、その代償として前腕の筋力と手首の強靭さが求められます。焦らず、まずは「手首を乗せて耐える」ことから始めてみてください。これができるようになれば、マッスルアップ成功はもう目前です!
安全で痛くない鉄棒の握り方

鉄棒は楽しい運動ですが、一歩間違えれば大怪我につながるリスクもあります。また、「手が痛い」というシンプルな理由で練習を辞めてしまう子も少なくありません。
ここでは、安全を守るための鉄棒の握り方の鉄則と、痛みを軽減して練習を継続するための具体的なケア方法について深掘りします!
親指をかけるサムアラウンド

鉄棒を握る際、何があっても絶対に守らなければならない「鉄の掟」があります。
それは、親指をバーの下から回し込んで、人差し指や中指の上からロックする「サムアラウンド・グリップ(Thumb Around Grip)」を徹底することです。
「たかが親指一本でしょ?」と思うかもしれませんが、この一本が、命に関わる事故を防ぐ最後の砦となります。
ここでは、なぜ親指をかけることがそれほど重要なのか、その力学的メカニズムと、子供への効果的な指導法について深掘りします。
親指は「命綱のフック」である
鉄棒運動中、手には常に強力な負荷がかかっています。
回転による遠心力、着地の衝撃、そして体重の数倍にもなるG(重力加速度)。
これに対し、親指を外した状態(4本の指だけ)で耐えようとするのは、留め具のないフックに荷物をぶら下げているようなものです。
サムアラウンド・グリップの真髄は、単に親指をバーに回すだけではありません。回した親指で、人差し指や中指を上から押さえ込む(ロックする)ことにあります。
- ストッパー機能:手が汗で滑ったり、握力が限界に達して指が開きそうになった時、親指が「蓋」の役割を果たし、他の指がバーから離れるのを物理的に食い止めます。
- グリップ力の強化:親指で他の指を締め付けることで、手全体がひとつの固いリングのようになり、少ない力でも強固な保持力を発揮できます。
なぜ子供は親指を外したがるのか?
指導現場でよく見かけるのが、何度注意しても無意識に親指を外してしまう(並行に揃えてしまう)子供たちの姿です。これには理由があります。
子供の小さな手にとって、鉄棒のバーは相対的に太く感じられます。
そのため、親指を回そうとすると窮屈に感じたり、深く握れないような不安感を覚えたりして、無意識に「4本の指で深く引っ掛ける」方が楽だと錯覚してしまうのです。
しかし、これはあくまで「ぶら下がっている静止状態」での安心感に過ぎません。動き出した瞬間、そのグリップは最も脆いものへと変わります。この「感覚のズレ」を修正するのが、僕たち大人の役割です。
「鍵をガチャッ!」子供に伝わる声かけ
「親指をかけなさい!」と怒っても、子供はなかなか直せません。そんな時は、イメージしやすい言葉で動作を具体化してあげましょう。
【効果的な指導フレーズ】
「親指で鍵をガチャッとかけよう!」:鉄棒を握った後に、親指を人差し指の上に重ねる動作を「施錠」に見立てます。「鍵がかかってないと、おててが開いて落っこちちゃうよ」などと伝えると、危機管理意識も芽生えます。
指導者の鉄則:見て触って確認する
最後に、指導する側(保護者や先生)への重要なお願いです。
子供が「握ったよ!」と言っても、決して言葉だけで信用しないでください。
必ず近寄って、実際に子供の手を触り、親指がしっかりとロックされているかを確認(触診)してください。そして、練習中も定期的に「鍵かかってる?」と声をかけ続けてください。
このひと手間、この一瞬の確認作業が、落下事故という最悪の事態を防ぎ、子供の安全を守る確実な方法なのです。
サムレスグリップの危険性
先ほどの「親指ロック(サムアラウンド)」の話と対になるのが、絶対に避けていただきたい危険な握り方、親指を外して5本の指をすべてバーの上に揃えて握る「サムレスグリップ(Thumbless Grip)」です。

この握り方には、英語圏のトレーニーの間で広まった、背筋が凍るような別名が存在します。その名も「スーサイドグリップ(Suicide Grip=自殺グリップ)」。
なぜ、これほどまでに恐ろしい名前がついているのでしょうか。そこには、単なる「滑りやすさ」を超えた、致命的なリスク構造が隠されています。
ストッパー不在による「後方落下」の恐怖
サムレスグリップの最大の問題点は、「進行方向に対する物理的なストッパーが一切存在しない」ことです。
例えば、懸垂や回転技を行っている最中に、疲労で握力が低下したり、手汗でバーが滑ったりしたとします。この時、親指がかかっていれば、親指がフックとなって落下を食い止めてくれる可能性があります。しかし、サムレスグリップの場合、滑り出したら最後、何の抵抗もなく手がバーから外れてしまいます。
さらに恐ろしいのは、その落ち方です。
- 通常(親指あり)の落下:手が離れても、体勢を崩しながら足から着地できる可能性が高いです。
- サムレスグリップでの落下:バーを握り込めていないため、手が外れた瞬間、反動で身体が「後方」または「頭から」すっぽ抜けるように落下します。
この「不意打ちの後方落下」は、人間の反射神経では受け身を取ることが極めて困難です。
その結果、無防備な状態で後頭部や首、背骨を地面や鉄棒の支柱に強打することになります。これが「自殺」と呼ばれる所以であり、実際に深刻な後遺症を残す事故も報告されています。
「押しやすい」という危険な誘惑
それほど危険なら誰もやらないはずですが、なぜか一部の上級者や独学で練習している人が、この握り方をしてしまうことがあります。
その理由は、「プッシュ動作(身体を押し上げる動き)がやりやすいと錯覚してしまう」からです。
確かに、親指を外して手のひらの根元(掌底)をバーに乗せると、手首の角度が自由になり、ベンチプレスのように「押す」感覚が得やすくなります。
しかし、これは鉄棒においては「安全性を犠牲にして得た、偽りの利便性」に過ぎません。
【誤解を解きましょう】
正しい技術を身につければ、親指をしっかりかけた「サムアラウンド」の状態でも、掌底を使って身体を押し上げることは十分に可能です。マッスルアップなどの高度な技においても、安全なグリップで実施することが、プロフェッショナルとしての正しい姿勢です。
安全に関する公的な指針
学校体育やスポーツ指導の現場においても、この問題は決して軽視できるものではありません。教育現場では、何よりも安全が最優先されます。
文部科学省が発行している指導の手引きにおいても、鉄棒運動における事故防止の観点から、器具の適切な使用や、児童生徒の能力に応じた段階的な指導の重要性が繰り返し強調されています。
無理な技への挑戦や、基本を無視した不適切な握り方は、重大な事故の元凶となります。
公的機関からのメッセージ
指導者は、子供たちが安全に運動できるよう、正しい握り方を徹底して指導する責任があります。自己流の危険な握り方を放置することは、指導上の過失にもなりかねません。
「自分は握力があるから大丈夫」「こっちの方がやりやすいから」という油断が、取り返しのつかない事故を招きます。鉄棒を握るときは、例外なく親指をかけてください。これを妥協なき絶対のルールとして、心に刻んでください。
手が痛い時のグローブの選び方

「鉄棒が痛くて皮がむけるのが嫌だ」という理由で、鉄棒嫌いになってしまうのは本当にもったいないことです。
痛みを我慢するのが美徳ではありません。適切な道具(グローブ)を使って、痛みをコントロールすることも立派な技術の一つです。
軍手はNG!その理由は?
よく公園で軍手をして練習している子を見かけますが、実はこれはあまりおすすめできません。
一般的な綿の軍手は繊維が滑りやすく、鉄棒との摩擦が極端に減ってしまいます。
その結果、滑らないように余計な力で握りしめる必要があり、かえって握力を消耗して疲れてしまうのです。
「じゃあ何を使えばいいの?」と迷ったら、体操専門メーカーのプロテクターが一番安心です。手の皮がむけるのを防ぐだけでなく、握力のない子でも鉄棒をしっかり握れるようサポートしてくれますよ。
おすすめは「ゴム付き」か「革手袋」
練習用としておすすめなのは、手のひら側にゴムの滑り止め加工がされた手袋や、ホームセンターの作業用コーナーで売られている子供用の「革手袋(背縫い手袋など)」です。
特に革手袋は耐久性が高く、使い込むほど手の形に馴染んでグリップ力が増します。プロの体操選手が使うプロテクターも革製ですよね。
革手袋は数百円程度で購入できるものも多いので、ぜひ試してみてください。
「痛くないからもっとやりたい!」と、子供の練習意欲が変わる瞬間を何度も見てきました。楽しんで練習することは、他の何よりも成長を後押ししてくれます!
マメのケアとテーピングの裏技

鉄棒の練習を熱心に続ければ続けるほど、手のひらには固い「マメ(医学用語では胼胝:べんち)」ができていきます。
これは皮膚が摩擦から身を守ろうとする正常な防衛反応であり、いわば「頑張った証(勲章)」でもあります。
しかし、この勲章も放置すれば厄介なトラブルに変わります。
マメが分厚くなりすぎると、鉄棒のバーに引っかかりやすくなり、何かの拍子に深部から皮膚ごと剥がれてしまうことがあるのです。
ここでは、怪我を未然に防ぐための予防策と、傷口を保護して練習を継続するための「テーピング保護術」をご紹介します。
練習を続けるための「ブリッジ貼り」保護法
万が一皮がむけてしまったけれど、どうしても練習を休めない時もあると思います。
普通の絆創膏ではすぐに剥がれてしまいますし、テーピングを直接貼ると剥がす時に激痛を伴います。
そこで役立つのが、患部に粘着面を当てない「ブリッジ貼り」という保護テクニックです。
ただしこれは治療法ではなく、あくまで摩擦から傷口を守るための工夫です。
| 手順 | 詳細なやり方 |
|---|---|
| STEP 1 長めにカット | 非伸縮性のホワイトテープを、傷口を十分に覆える長さ(約10cm〜15cm)にカットします。 |
| STEP 2 粘着面をなくす | ここが最大のポイントです。テープの中央部分、ちょうど傷口に当たる長さの分だけ、粘着面同士を貼り合わせるように折り返します(縦に折るのではなく、テープ自体を折りたたむイメージ)。 |
| STEP 3 ブリッジ完成 | すると、両端は粘着力があり、中央部分だけがツルツル(非粘着)の状態になります。このツルツル部分を「ブリッジ」と呼びます。 |
| STEP 4 装着 | ブリッジ部分を傷口に当て、両端の粘着部分を手首側と指の付け根側の、健康な皮膚にしっかりと貼り付けます。 |

この方法なら、テープの厚みだけで傷口を摩擦から守ることができます。ただし、出血がひどい場合や痛みが強い場合は、無理に練習をせず、専門医の治療を受けることを最優先してください。
先ほども説明しましたが、ブリッジ貼りに使うテープは、伸び縮みしない「非伸縮タイプ」を選んでください。100円ショップのものだと粘着力が弱く練習中に剥がれやすいので、スポーツ用のしっかりしたものがおすすめです。
厚くなったマメは「整える」のが正解
「皮がむける前」の予防ケアも重要です。
マメが分厚く盛り上がって黄色くなっている場合、段差がバーに引っかかり、皮膚がめくれる原因になります。
お風呂上がりなど皮膚が柔らかくなっている時に、軽石ややすりを使って、周りの皮膚と馴染むように優しく整えておきましょう。
無理に削り取ったり、刃物を使ったりすることは危険ですので避けてください。常に手のひらを滑らかに保つことが、最良の予防策です。
お風呂がしみる!入浴時のハック
皮がむけた日の夜、お風呂でお湯が傷口にしみるのは辛いものです。
そんな時は、100円ショップなどで売っている「薄手のビニール手袋」を活用すると便利です。
- 患部を保護するクリーム等を塗布します。
- ビニール手袋を装着します。
- 手首の部分から水が入らないように、輪ゴムやヘアゴムで強めに縛ります。
このスタイルなら、傷口を濡らさずにゆっくりお風呂に入れます。ストレスを減らす工夫も、長く練習を続ける秘訣ですよ!
【Q&A】鉄棒の握り方・練習に関するよくある質問
ここでは、教室で保護者の方や生徒さんから実際によくいただく質問にお答えします!
【Q1. 手が痛くて子供が練習を嫌がります。どうすればいいですか?】
A. 無理せず手袋を活用し、痛みが引くまで休ませてあげてください。
手のひらの痛みは、初心者が最初にぶつかる壁です。まずは記事内で紹介した「滑り止め付き軍手」や「革手袋」を活用してみてください。
素手で練習しなければならないというルールはありません。また、マメが痛む場合は、皮膚が回復するまで数日間休むことも立派な練習計画の一部です。
【Q2. もう高学年ですが、今からでも逆上がりはできるようになりますか?】
A. もちろんです!年齢は関係ありません。
高学年になると体重が増えるため、低学年の頃より難易度は上がりますが、その分「理解力」と「基礎筋力」が備わっています。
今回ご紹介した「逆手グリップ」や「タオル補助」を論理的に理解して実践できれば、短期間で成功することも珍しくありません。焦らず正しいフォームから取り組んでみてください。
【Q3. 家に鉄棒がないのですが、公園の鉄棒でも大丈夫ですか?】
A. 公園の鉄棒でも十分練習可能です。
ただし、公園の鉄棒は錆びていたり、太さが子供の手に合わなかったりする場合があります。練習前に大人がぶら下がって安全確認をすることをお勧めします。
また、高さが調節できないことが多いので、お子さんの胸〜おへその高さに合う鉄棒を選んで練習しましょう。
公園に行く時間がなかなか取れない場合は、室内用の折りたたみ鉄棒を用意することも検討してあげてください。お風呂上がりに「10秒ダンゴムシ」をするだけで、驚くほど上達が早くなります。「見られていると恥ずかしい」というお子さんにもぴったりですよ。
まとめ|習熟度に合わせた鉄棒の握り方
最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!
では、これまでご紹介してきた様々な握り方を、習熟度や目的別に整理しておきましょう。
今の自分や、指導するお子さんがどの段階にいるのかを確認し、最適なグリップを選んでください。
| レベル | 推奨グリップ | 目的と指導のポイント |
|---|---|---|
| 入門・初心者 (逆上がりができない) | 逆手 (+タオル補助) | まずは身体を引きつける感覚をつかむことが最優先。逆手で肘を曲げやすくし、必要ならタオルを使って回転感覚を養います。成功体験を積み重ねることが大切です。 |
| 中級者 (逆上がり安定期) | 順手 | 逆上がりができるようになったら、順手での練習に切り替えます。順手は連続技への移行がスムーズで、基本技術の確立に必須です。順手でも肘を曲げて引きつけられる筋力を養いましょう。 |
| 上級者 (空中技・高難度技) | 順手 フォールスグリップ | 空中逆上がりや大車輪などのダイナミックな技は順手で行います。マッスルアップなどの特殊な技にはフォールスグリップを用い、目的に応じて高度なグリップを使い分けます。 |
鉄棒の握り方に「これさえやれば全てOK」という絶対の正解はありません。
成長に合わせて、補助輪を外すようにグリップを変えていくことが上達への近道です。焦らず、楽しみながら、自分に合った握り方を見つけてみてくださいね!
【免責事項】
本記事は、筆者の経験や調査に基づく一般的な情報・考え方の紹介です。
安全確保について: 練習中に痛み・しびれ・強い恐怖で体が固まる・めまい/吐き気が出た場合は直ちに中止してください。床が滑る場所、周囲に家具の角がある環境、十分なマットがない環境では行わず、必ず大人が安全確保(スペース確保・用具固定・転倒時の受け身補助)を行ってください。
医療に関する免責: 本記事で紹介しているマメのケアや保護方法は、スポーツ現場での一例であり、医学的な助言や治療法ではありません。傷の状態がひどい場合、出血が止まらない場合、化膿の恐れがある場合は、自己判断せず皮膚科等の専門医を受診してください。
健康状態の確認: 具体的なトラブルや体調不良などについては、所属先の相談窓口や専門家への相談も検討してください。特に、心臓・呼吸器・整形外科的な持病や、医師から運動制限を受けているお子様については、必ず事前に小児科・整形外科などの医師に相談した上で練習内容や強度を決めてください。
器具の使用について: 器具(室内鉄棒・踏み台・補助ベルト等)は必ずメーカーの対象年齢/耐荷重/設置条件/使用方法に従ってください。破損やガタつきがある場合は使用しないでください。